シニア(高齢者)の老後の生活には、もしもの不安が多いのが現実です。
もしも配偶者を介護する、もしも誰かの介護を受ける、もしも施設入所する、もしも身体が不自由、もしも認知症、もしも病院に入院する、などなどです。
これらの「もしも」の不安に対し、ご家族がいない、あるいはいても県外にいる、あるいは何らかの事情があって安心できないなどの場合は、次の図のような「家族的関係」を創出することも選択肢の一つはないでしょうか。
例えば、次の図のように、任意後見契約を軸に、見守り契約、財産管理契約、死後事務委任契約を追加して契約締結する方法があります。
なお、これらの契約の相手は、ご本人が最も信頼できる方が望ましいのですが、万一、身近にいない場合は、当事務所において安心できる方をご紹介し対応することも可能です。
ご自身やご家族の安心のために任意後見制度を活用してみてはいかがでしょうか。
当事務所では、安心できる任意後見契約を実現するために、法人と提携し、法人が任意後見人となる契約作成も可能です。お気軽にご相談ください。
成年後見制度とは
認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力が不十分な方々は、不動産や預貯金などの財産管理をしたり、身の回りの世話に関する介護サービスや施設入所などの契約を結んだり、遺産分割協議をしたりすることが難しい場合があり、また、自分に不利益な契約を締結したりしてしまうことがあります。
このような方々を保護し、支援するのが成年後見制度です。
成年後見制度には、すでに判断能力の不十分となった方を保護する法定後見と判断能力があるうちに予め自らが選んだ代理人に代理権を与える任意後見があります。
法定後見とは
法定後見には、判断能力の程度により、次の表のとおり、後見、保佐、補助があり、それぞれ保護の方法等が異なります。
しかし、いずれも、判断能力がすでに不十分となっている本人が対象となり、このようなご本人を保護する制度です。
区 分 | 後 見 | 保 佐 | 補 助 |
対象となる人 | 判断能力が欠けているのが通常の人(常に介護が必要) | 判断能力が著しく不十分な人(常に援助が必要) | 判断能力が不十分な人(援助が必要な場合あり) |
申立人 | 本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、市町村長など | 同左 | 同左 |
同意が必要な 行為 | なし | 民法13条1項の行為 | 特定の法律行為 |
取消が可能な 行為 | 日常生活に関する行為以外の行為 | 同上 | 同上 |
代理権の範囲 | 財産に関するすべての行為 | 家庭裁判所が定める特定の法律行為 | 同左 |
資格などの制限 | 医師、税理士等の資格、会社役員、公務員等の地位喪失 | 医師、税理士等の資格、会社役員、公務員等の地位喪失 | なし |
任意後見とは
任意後見とは、本人が判断能力があるうちに、将来、判断能力が不十分となった場合に備えて、予め自ら選んだ代理人(任意後見人)に、ご自分の生活、療養看護や財産管理に関する事務の代理権を与える契約任意後見契約)を公正証書によって結ぶものです。
任意後見契約締結後、本人の判断能力が低下した時点で、家庭裁判所に対して任意後見人を監督する「任意後見監督人」の選任申立を行い、この任意後見監督人の監督のもと、任意後見人が代理権を行使して本人を保護・支援する制度です。
財産管理委任契約とは
財産管理委任契約とは、心身の障害などにより財産管理や生活支援を要する方への支援方法として、ご自分の財産の管理やその他の生活上の事務の全部又は一部の代理権を与える人を選び、具体的な管理内容を決めて委任する契約です。
法定後見制度や任意後見制度では、いずれも精神上の障害による判断能力の減退があった場合に利用できますが、この財産管理委任契約はそのような減退がない場合から利用できるというメリットがあります。
例えば、ご本人が身体障害者である場合、認知症ではないが寝たきりに近い状態となった場合、出歩くことができず金銭管理や支払いが難しい場合、施設や病院に入院中で日常的な預貯金以外の財産の保管、管理ができない場合などに第三者に代理権を与えて管理を委ねる場合に利用されます。
このような財産管理契約も任意後見契約と同時に公正証書によって作成することができます。
死後事務委任契約とは
ご本人が亡くなった場合、成年後見人の職務が終了することになりますので、ご本人に身寄りがいない場合であっても、葬儀や埋葬をはじめ法要の施行など、死後に行うべき事務については、任意後見人がすることができません。そこで、このような死後事務を委任する契約が必要となります。
最高裁(H4.9.22最高裁第2小法廷判決)は、「死後の事務の処理を委任した契約は、委任者死亡によっても終了させない合意があったもので、これにより委任者死亡後も委任契約の効力は継続する。」とし、死後委事務委任契約は一般的には有効と解されています。
死後事務委任契約も任意後見契約と同時に公正証書によって作成することができます。
任意後見契約の手続き
当事務所では、ご相談から契約書作成、任意後見開始、終了の流れは次のとおりとなります。ご希望に必要に応じて、継続的見守り契約、財産管理契約、死後事務委任契約などを追加することができます。
詳細は、当事務所までお問い合わせください。
1 契約書作成までの手順
①ご相談
②申込(ご依頼者)
③任意後見ノートの作成(ご依頼者)
④成年後見支援プランの作成(当事務所)
⑤ご依頼者へのご説明・依頼者の同意
⑥契約書案の作成(当事務所)
⑦契約書案の説明・修正・同意・報酬の支払い
⑧公正証書の作成・公証役場への手数料の支払い
2 任意後見契約締結から判断能力低下、任意後見開始、死亡、死後事務までの流れ
①継続的見守り(必要に応じて任意後見契約時に締結)
②財産管理契約締結(必要に応じて任意後見契約時に締結)
③判断能力低下
④任意後見監督人選任申出
⑤任意後見監督人選任=任意後見開始
⑥財産管理+身上監護
⑦死亡=任意後見終了
⑧死後事務委任契約(必要に応じて任意後見契約時に締結)